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無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語

焼酎の『百年の孤独』が好きだからってガルシア・マルケスを読んだわけではない。
でも、王道に対して、やはり、ちょっと横道にそれたものを読んでみたいと思うのは人の常ではないだろうか。ホルヘ・ボルヘスといった技巧的な文章を読むのが苦手な私にしてみれば、短編なので読みやすい。ボルヘスの短編は短編なのに難しい。
なかなか中米、南米といった国を代表する作家の作品は読むことがなく、10年くらい前にフェンテスに手をだしたくらいだった。このタイトルの本も5年前くらいに購入してから全く手をつけていなかったのだから、今更といったところか。
ところで、この作品である。
それほど悲惨ではない。少なくとも『ダーバヴィルのテス』なんかに比べてそれほど悲惨ではないのだ。
南米の男とヨーロッパの男の質の違いなのだろうか?
『テス』と比較すると、少なくとも、エンジェルも含めた男はいずれも、テスに対しての配慮はない上に、自己中心的である。テスはソロウを失うだけでなく、次々と彼女の物質的な部分、精神的な部分を消耗していく。『エレンディラ』では、彼女も娼婦として落ちてはいくものの、ウリセスという男に出会う。そして、信じがたいほどの優しさを得ることになる。でも、結局は、男か女が自己中心的なことをして話は終わるのだ。

この作品のすごさは描写が気持ちいいこと。所詮、翻訳なのだがである。
# by mir2004jp | 2004-04-13 00:34 | Book

百頭女

仕事をしていた。
出張の際には、珍しく本を持っていった。旅行の際には本を持っていかない私も、さすがに、シベリア鉄道での旅行のとき以来の本の持参をした。
マックス・エルンストの『百頭女』はコラージュの本であるのだが、ひたすら暇つぶしにも使えるし、悩んだり、考え事をしているときには、インスピレーションを与えてくれる広告の山積みされた倉庫のようなものだ。
早い人なら10分で読めるだろうし、かかる人は一生かかったも読めやしない。
私も、読むタイミングでまちまちだが、この本ほど、ばかばかしく自分自身に自信を失わせる本はなく、活力を与えてくれる本はないと思っている。
ふと思うこと。
タロットのカード
ストーリーが現在のトランプという範疇で4つあるが、これは小アルカナの世界。
そして、大アルカナの世界があるのだが、この『0』である愚者からのストーリーのオマージュではないかと錯覚してしまいそうになる。はっきり言えば、全然似てもにつかないストーリーなのに、ストーリーを映し出す情景が強制的にフローチャートで見えるようにも感じる。そして、ループしてくる。大アルカナも結局は繰り返しであるが、そのときそのときに、どのように判断するかを占う人に委ねているわけで、さして遠くはないはずだ。
この百頭女は何度読んでも、楽しく、そして、不可解な本だ。まさに、友人が中国の詩を持ち歩くのと同じようなものなのだろう。
# by mir2004jp | 2004-04-12 22:00 | Book

グレンドロナックに再会した

去年の10月のことだった。グレンドロナックをボウモアで飲んだ。
そのときに、スペイサイドと記憶していたのに、今日買ったボトルにはハイランドパークとあった。調べてみると、ちょうど、ハイランドパークとスペイサイドの境目に存在するのが、このグレンドロナックということだった。13年ものを購入してきたのだが、やはりとってもフルーティでのど越しもいい。ついでだからということで、ダルウィニーの15年も飲んで比較してみるが、やはりグレンドロナックはいいのである。飲み口がいい。そして、最後にマッカラン12年を飲む。やはり、私はスペイサイドから抜けられないのだろう。
クラガンモアを超えるものはないが、やはりマッカランは美味いのだ。もちろんグレンドロナックもうまいのだが、マッカランのバランスには適わない。
まだ、シングルモルトを飲み始めて1年くらいだというのに、大して銘柄も知らない自分に悲しみを感じつつも、着々と自分の好きな地域がスペイサイドで定着している。
カリラのように、3日たっても、赤チンの臭いであるヨードが消えなかったシングルモルトも忘れがたいが、やはり私は、あまり冒険家ではないので、妥当なところであるスペイサイドのクラガンモアが好きだ。貧乏性なのかもしれないが、持っているシングルモルトの中で一番安い。それでいいのだろう。
# by mir2004jp | 2004-04-12 21:49 | What I think about

セルビア・モンテネグロへは送れない。

郵便物をセルビア・モンテネグロに送ろうとした。
ここで、不思議なことを聞く。
『20g以上のものは送れません。』
たかだか、画集を送ろうとしただけだのに。
秋吉巒の画集で『Illusion』。
これは、絶品なのだ。
シュールレアリスムといったところなのだが、その作品にみられる美しさは西洋画家と、日本画家の良さが兼ね備えられている。
送ってあげたかった。
ところで、このセルビア・モンテネグロは以前のユーゴスラビア。
『南スラブ』から『セルビアと黒い山』に変わった。
本当にいい国なのだ。
15世紀頃まで、手で食事をとっていた西ヨーロッパに対して、セルビアはもう既にフォークを使っていたのだ。実際に歴史古く、ヴィリーナともいうべきマルコ・クラリィエヴィッチの話もあるくらい、なんら西と変わらないのに、ただ、宗教が東方正教会であったということで、目の敵にされ、今じゃ、20g以上の手紙を送ることさえ許されない。
哀しい限りだ。やはり行くがいいのかもしれない。
# by mir2004jp | 2004-04-12 17:52 | What I think about

スパニッシュ・アパートメント

セドリック・クラピシュ監督の映画は『青春シンドローム』ではじめて出会った。
今回の主役もロマン・デュリス。この前みた『パリの確率』ではジャン・ポール・ベルモンドと演じていたけど、今回は、ジュディット・ゴドレーシュ。懐かしい俳優が共演する。
しかも、今回は非常にタイムリーだ。
なぜって、主人公グザヴィエはスペインのバルセロナに留学しにいくのだ。
今回のあたり役はイザベルといった感がやはり強い。アパートをシェアしているメンバーがフランス、スペイン、ドイツ、ベルギー、イタリア、イギリス、デンマークと7人とも国籍が違う。走ったり、踊ったり、放心したり、泣いたり、笑ったり、悲しんだり、立ち止まったり、怒ってみたりとみな忙しい。
『青春シンドローム』で気に入ってから、見るようになったのだが、今回のもやはりあたりだった。ネタばれは極力しないように心がけるが、
「幼い頃の自分を失望させたくない。」
この一言が、うんうんと頷けるもので、私はこの監督はそれまでのストーリーを一気に軸ではなかったという否定を加える。
私も、幼い頃の自分のやりたかったことのために、いろいろと遠回りをしてここまで来ているが、まだ捨てちゃいない。
この先が怖いけど、そういうのもまだいいんではないかと思いつつ、この映画をみてこの監督はいつもくすぐったいと思ってしまった。
# by mir2004jp | 2004-04-12 17:35 | Film