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26.品川からサンクトペテルブルクへ①(旅日記風)

2000年夏。少し時間があった。
一年前にアジア横断をしていた私が心残りにしていたもの、それは、シベリア鉄道でのユーラシア横断。
ただし、ちょっと他の人とは違うことをしたい。
私は、みなと同じはつまらない。
いや、正確にいうと、みなと同じであってはならない。
この思いがずっと積み上げられて、私は行動した。

決断した内容は、青春18切符での品川からロシア・サンクトペテルブルクへの列車の旅。

「切符は買ってからの乗車が望ましい。」

重苦しい空気とは裏腹に気分の方は上々だった。この旅のスタート地点は今までとは違い、自宅からとなったからである。この認識は一日をかけて出国の地に向かうという意味で、以前の空港からひとっ飛びとは明らかに異なるからだ。夜の10時に家を出、JR品川駅にて臨時の大垣線に乗らなければならなかった。

品川駅は驚くべきほどの旅好き、あるいは、金を使わないちょっとした青春をたのしむ学生たちの群れを包み込んでいた。もちろん私も、その一人にほかならない。
いつもどおり、一人旅。暇を持て余していると、気になる人たちを見かけた。並んだ列で困っている風の女子大生5人組み。、
「十八切符買えなかったんです。」
事情は、簡単で、夜の駅で切符を購入しようとしたところ、みどりの窓口が閉まっていたとのことだった。ただ、もう一人来る友達が買ってくるとのことだった。はじめて、十八切符を使うらしく切符の形態も知らなかったらしく、説明しながら見せるとみな興味津々だった。

列車に乗ってみるとやはり席は埋まってしまっていて、ひとりものの私は座れても、6人の女子大生は座れるはずもなく、入り口の通路の新聞を敷き名古屋に向かうことになった。彼女たちの行き先は、友人の実家がある名古屋からの中央線沿線の駅だった。

私は、十八切符がなくてもなんとかなる方法を伝授するために、ちょっと話をしにいった。行き先が以前行ったことのある場所であったため、容易いことだと判断できた。彼女たちが今度は、私に質問してきた。
「おにいさんは、どこに行くんですか?」
どういうわけだか、おにいさんと呼ばれてしまったことに、驚きつつも答えた。
「サンクトペテルブルグ」
 「すごーい。」
隣に座っていた女の子が言った。
もう一人の女の子は顔をしかめていた。
「へっ?」
しまったと思った。また他の女の子が、感嘆した友達に質問た。
「それって、どこ?」
だれも、答えられる人がいなかった。やはりだった。調子にのってしまった。ほんの些細な笑える話のつもりが、そうでもないことに気が付いたのが少々遅かった。
「ロシアの都市で、モスクワよりもっと向こうにあるんだけど、すごく美しい都市のひとつと言われているんだ。昔からどうしても行きたかったから。」
「男の人はいいよね。ひとりで、行けるし…」
たしかに、そのとおりかもしれない。そうおもいつつ、列車内が混んできてしまい座席に戻らざるをえなくなった。そこで、必死に眠る努力をしながら、いくつかの駅を通り越していた。
私の横の通路には大学生の男2人が眠い目をこすっていた。疲れていたみたいだった。
「席を譲りましょうか?」
問い掛けてみるも、その必要もなかったらしく、話相手になってもらえた。私はなかなか眠れないため、非常に助かった。
ある程度、通路が空いたのを見計らい、品川で知り合った女子大生の様子を見に行くと、防空壕に避難をしている女性のようだった。一人は確実に、消耗していた。その子をとりあえず、私の席で眠らせ、私と大学生の男の子とで、入り口の防空壕生活に加わった。

神戸の三宮についたのは午前10時頃だった。あとは、ポートターミナルに行き、燕京号に乗り込むだけだった。近くのダイエーで少々買い込んで、旅に備えた。このとき、まだ旅がはじまるという実感はなかった。いつも通りのゆっくりとした出足だった。
by mir2004jp | 2009-03-20 23:48 | Russia etc
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